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損害賠償請求における訴訟とはなんですか?

訴訟とは、法的な権利義務についての争いについて、裁判所に申立をして、判決によって紛争を解決するための手続きです 一般的には「裁判」と言われることも多いです。 世間では、いろいろな紛争が起こりますが、これらの中でも法的な権利義務に関わる紛争であれば、訴訟によって解決することができます。 損害賠償請求も、損害賠償請求権という権利、損害賠償義務という義務に関する紛争ですから、訴訟を利用することによって解決することができます。 損害賠償請求のための訴訟のことを「損害賠償請求訴訟」と言います。 損害賠償請求訴訟を申し立てた人のことを「原告」、申し立てられた人のことを「被告」と言います。通常は、被害者が原告となり、加害者を被告として損害賠償手続きを進めていきます。

訴訟では、裁判所が当事者双方の主張内容と立証内容を確認して、最終的にその内容によって裁判官が妥当な結論を下します。この結論を下す手続きのことを「判決」と言います。 判決には終局的に紛争を解決させる効果があるので、判決が下されると、当事者は他の機関に異議を申し立てることができません。 そこで、どんなに当事者間の溝が深く、トラブルになっているケースでも、訴訟を利用すると、終局的に解決することができます。 訴訟は、非常に複雑で専門的な手続きなので、当事者が自分の独力で進めて行くのは難しいことが多いです。また、訴訟を行うとき、必ずしも自分の希望通りの判決が出るとは限りません。有利に進めるためには、弁護士の助力が必要になります。

損害賠償請求において、どのような場合に訴訟をするべきですか?

次に、どのようなケースで損害賠償請求訴訟を起こすべきか、考えていきましょう。

相手との対立が激しく、解消できないケース

まず、相手(加害者)との対立が激しく、その溝を解消できないケースでは、訴訟が向いています。 たとえば、こちらが500万円を請求しているのに、相手が10万円しか支払わないと言っているような場合です。この場合、話合いや調停などを行っても、双方の溝が埋まる可能性が低いですし、仲裁判断をしてもらっても、当事者双方が受け入れない可能性が高いです。そこで、訴訟によって終局的に問題を解決する必要があります。

相手が話合いに応じないケース

損害賠償請求をしても、相手が話合いにまったく応じないケースがあります。内容証明郵便を送っても無視されたり、受取拒否されたりすることもあります。 このような場合、調停を申し立てても、調停に来ない可能性が高いですし、仮に来たとしても、話にならないことが予想されます。 その場合、調停をしても時間と労力が無駄になるだけなので、いきなり訴訟をする方が適切である場合が多いです。

調停等、他の解決方法では解決できなかったケース

相手と話し合いが決裂したので、簡易裁判所で調停をしたけれども、やはり解決ができずに不成立になることがあります。また、ADRを利用して仲裁決定をしてもらったけれども、受け入れられずに効果が発生しないこともあるでしょう。 このように、他の解決方法では解決できなかった場合には、終局的な解決方法である訴訟によって解決する必要があります。 訴訟をすると、他のどの方法でも解決できなかった困難な紛争を、裁判所が判決によって解決してくれます。

当方の主張が100%正しく、絶対に譲りたくないケース

損害賠償請求を行うとき、被害者側の言い分が100%正しい場合や、少なくとも被害者がそう信じている場合があります。たとえば、相手が一方的に襲ってきてケガをさせられた場合や死亡させられた場合で損害内容も明らかなケース、ものやお金を取られて評価額が明らかなケースなどが考えられます。 このような場合、話合いによる解決をしようとすると、ある程度は妥協しなければならないので、損害賠償金額の減額などが必要となります。 しかし、当方に理があるにもかかわらず、減額に応じることは不合理だと感じることも多いでしょう。 裁判をすると、正しい主張が100%認められるので、妥協をする必要がありません。 こちらの主張内容が正しければ、請求が100%認容されて、相手に全額の支払いをさせることも可能となります。

時間や労力をかけても、正当な判断をしてもらいたいケース

損害賠償請求訴訟を起こすと、かなりの長期間がかかりますし、多くの労力を費やさねばなりません。弁護士をつける必要性が高いため、費用もかさむでしょう。 しかし、こうした費用や労力、時間をかけても正しい判断をしてもらいたい、というケースがあります。相手を絶対に許せない場合、どちらが正しいのか白黒はっきりしてほしい場合などです。 このように、時間や労力等をかけても正しい判断をしてもらいたいケースでは、訴訟を利用すべきです。判決をしてもらったら、それが自分に有利になるかどうかはわかりませんが、少なくともどちらの言い分が正しいのかが明らかになります。

訴訟をするために必要な条件や手続きはありますか?

訴訟をするときの条件

訴訟を行うとき、特に条件はありません。 示談交渉なしにいきなり訴訟を起こすこともできますし、調停や労働審判、ADRなどの他の手続きを先に行う必要もありません。 ただし、訴訟で勝つためには、「証拠」が必要です。 訴訟では、証拠のないことは「存在しない」前提で進められてしまうためです。 不法行為にもとづく損害賠償請求訴訟を行うときには、請求者側が「相手の違法行為」「故意過失」「損害の発生」「因果関係」を立証しなければなりません。債務不履行の場合には、「相手の債務不履行」「損害の発生」「因果関係」の証明が必要です それぞれについて、証明できるだけの証拠が必要となるのです。 訴訟を起こすのは誰でも自由にできますが、証拠がなかったら負けてしまって請求内容を認めてもらうことができないので、何の意味も無くなります。 そこで、訴訟を起こすときには、事前に証拠を集めておくことが必要です。たとえば不倫にもとづく慰謝料請求であれば、不倫の証拠として、興信所の報告書やメール、写真、領収書などの不倫を証明する証拠と、夫婦関係を証明する戸籍謄本などが必要となります。

訴訟をするときの手続き

訴訟を申し立てるときには、「訴状」という書類を作成する必要があります 訴状には、被告に対する請求内容と、原告の主張内容を法的に整理した説明内容を記載する必要があります。内容が法的にきちんと整理されていない場合、訴状を受け付けてもらえないおそれがありますし、不適法として訴えが却下されてしまうおそれもあります。 また、訴状に記載した内容は、後から「やっぱり違いました」と言って簡単に撤回できるものでもありません。撤回すると、主張内容の信用性を疑われてしまうためです。そこで、内容を慎重に検討して作成しましょう。 訴状と証拠を用意したら、それぞれ2部作成して、裁判所に提出します(被告が1人の場合)。被告が2人以上なら、その分部数を増やす必要があります。 また訴訟を起こすときには、請求金額に応じた収入印紙もつける必要があります。 請求金額が高額になると、その分印紙代も高額になります。 さらに、1件について6000円~7000円くらいの予納郵便切手必要です。 訴訟を起こす手続きは、非常に難しいですし、素人が訴状を作成すると、内容が不十分、不適切になってしまうおそれが高いです。有利訴訟を進めたければ、当初から弁護士に依頼すると良いでしょう。

訴訟をすることのメリットはありますか?

終局的に紛争を解決できる

訴訟のメリットは、なんと言っても終局的に紛争を解決できることです 訴訟以外の方法は、どの方法でも終局的な解決をすることができません。 示談交渉をしても決裂したら終わってしまいますし、調停をしても、お互いに合意ができなければ調停は成立しません。 仲裁を利用しても、どちらかが仲裁案を受け入れなかったら、やはり問題を解決することはできないのです。 訴訟によって判決がでたら、その内容を他の機関に訴え出て覆すことは認められません。

相手が納得しなくても、解決できる

損害賠償請求を行うとき、相手の言い分と当方の言い分の差が激しかったら、合意に達することは難しくなります。その場合、示談や調停では合意できませんし、仲裁を利用しても、どちらかが反対して仲裁決定は失効してしまうでしょう。 訴訟であれば、相手や当方が納得していなくても、強制的に判決が有効になってしまいます。そこで、相手が無理な主張をして譲らず、話合いが不可能なケースでも問題を解決できるメリットがあります。

100%の支払いを受けられる可能性がある

訴訟をするとき、当方の言い分が正しければ、100%自分の意見が通る可能性があります たとえば、1000万円の請求をするときに、判決であれば、1000万円全額の支払い命令を出してもらうことができます。 このようなことは、他の手段ではほとんど不可能です。示談や調停をするときには、お互いが譲り合わないと解決することができませんし、仲裁決定を得るときにも、どちらかを完全に勝たせる内容の決定がでることはほとんどないためです。

遅延損害金が加算される

訴訟のメリットの中でも見逃せないのが、遅延損害金を加算できることです。 遅延損害金とは、支払が遅れていることによって発生する損害賠償金のことです。 訴訟の場合、不法行為時や債務不履行になったときから、年5%または年6%の割合で、遅延損害金を加算した判決を出してもらうことができます 長期間が経過しているケースや賠償金の金額が大きいケースでは、遅延損害金の金額が相当大きくなることもあるので、これは大きなメリットとなります。

強制執行ができる

訴訟によって判決がでると、その判決には強制執行力が認められます。強制執行力とは、相手が従わない場合に相手の資産を差し押さえることができる権利です そこで、相手が判決に従った支払をしない場合、判決書を使って相手の預貯金や不動産、給料等を差し押さえることにより、効果的に回収をすることができます。

弁護士費用を一部支払ってもらえる

損害賠償請求をするとき、訴訟以外のケースでは、当方にかかった弁護士費用を相手に支払ってもらえることがありません。弁護士費用については、それぞれが自分にかかった費用を負担すべきとするからです。 ただ、訴訟を行う場合には、判決で認容された金額の1割を、不法行為と相当因果関係のある損害として認めてもらうことができます。(債務不履行にもとづく損害賠償請求の場合、通常弁護士費用は認められません) このように、弁護士費用を一部認めてもらえることも、訴訟を行うメリットの1つです。

訴訟をすることのデメリットはありますか?

長い時間がかかる

まず、訴訟をすると、相当長い期間がかかってしまいます。 普通に判決を出してもらうまでには、標準的に8ヶ月くらいかかります。それより長くなることもありますし、早期に和解ができたとしても、半年程度はかかってしまうことも多いです 示談交渉なら1ヶ月もかからずに解決できることがありますし、調停や仲裁決定などの他の手続きによっても2ヶ月~3ヶ月で解決できることが多いので、それらと比べると、このように長い期間がかかる点は、訴訟のデメリットと言えるでしょう。

費用がかかる

訴訟には、比較的多額の費用がかかります。 まず、訴訟自体に費用がかかります。損害賠償の金額に応じて、裁判所に印紙代を支払わなければならないからです。 たとえば1000万円の請求を行う場合、収入印紙の金額は5万円にもなるので、決して安い金額ではありません。 また、訴訟をするときには弁護士がほとんど必須となります。すると、高額な弁護士費用がかかってしまいます。弁護士費用の金額は、事案にもよりますが数十万円~数百万円にもなるので、相応の出費になってしまいます。 示談や調停、仲裁を自分で行った場合には、こういった費用はかからないので、この点は訴訟のデメリットと言えます。

労力がかかる

訴訟は、非常に労力がかかる手続きです。 そもそも、申し立てる段階から、訴状や証拠を揃えないといけませんし、訴訟を進めている最中も、何度も主張書面を作成して追加の証拠を提出していかなければなりません。最終的には尋問を受けて、裁判官の前で的確に受け答えをする必要があります。 弁護士に依頼しているとは言え、証拠集めや尋問の負担は当事者に及びます。このことも、訴訟のデメリットと言えるでしょう。

敗訴リスクがある

訴訟をしても、必ずしも勝てるとは限りません 進め方がまずかったら、負けてしまうリスクも十分にあります。敗訴すると、損害賠償を全く認めてもらえないこともありますし、金額を大きく減額されてしまうこともあります。 訴訟で負けてしまう場合、事前に交渉や調停の段階ででていた解決案の方が得だったということも起こりえます。 このように、訴訟には敗訴リスクがあることを常に意識しながら進めるべきです。「絶対勝てる」と過信して訴訟を進めると、酷いしっぺ返しを受けるおそれがあります。

以上のように、訴訟をすると、終局的に損害賠償問題を解決できますし、相手が納得しなくても支払を強制できるのは大きなメリットです。反面、費用や労力、時間がかかり、敗訴リスクもあるというデメリットがあります。訴訟をするときには、必ず法律のプロである弁護士に手続を依頼して、有利になるように進めましょう。

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