損害賠償請求とはなんでしょうか?
損害賠償請求とは
損害賠償請求とは、相手による債務不履行や 不法行為によって損害を受けたときに、 その損害についての補償を求めることです。
債務不履行とは
債務不履行とは、相手が契約通りの義務を果たさないことです。 たとえば、商品を約束の日までに渡さない場合、期日までにお金を支払わない場合、引き渡すべきものを壊してしまい、引き渡し不能になった場合などに債務不履行となります。 ただし、債務を履行できなかったことについて、債務者に故意も過失もなかったら、債務不履行にもとづく損害賠償責任は発生しません。
不法行為について
民法には、「不法行為にもとづく損害賠償」についての定めがあります。 不法行為というのは、故意や過失にもとづく違法(=法律違反)な行為により、人に迷惑をかけることです。そして、法律では、不法行為が行われた場合、それによって被った損害については、加害者に支払い請求ができると規定されています。そこで、相手の不法行為にもとづいて損害を受けたら、加害者に対して賠償請求をすることができるのです。 不法行為が成立するためには、「行為が違法なこと」と、「その行為が故意や過失にもとづくこと」が必要です。 そこで、外形上違法な行為があったとしても、故意や過失がまったくなかったら、不法行為は成立せず、損害賠償責任も発生しません。 たとえば、名誉毀損をしたときや不倫をしたとき、人を殴ったときや物を盗ったときなどに不法行為が成立します。これらの行為は違法ですし、通常故意や過失に基づいています。そして、その違法行為によって、被害者が損害を受けるからです。
損害賠償請求をする方法
損害賠償請求をするときには、多くの場合、まずは示談交渉をします。示談交渉というのは、話合いによって損害賠償請求をする方法です。 そこで、たとえば痴漢被害を受けた場合や窃盗被害に遭った場合、不倫された場合などに、相手と示談交渉をします。契約通りの支払や納品を受けられない場合などにも、やはり話合いによって解決しようとします。 示談が成立したら、示談金の支払いを受けることができますが、示談は損害賠償の方法ですから、示談金は損害賠償金ということになります。 示談によっても賠償金の支払を受けられない場合には、損害賠償請求訴訟という訴訟によって、損害賠償請求を進めていくことになります。
損害賠償請求ができる権利はどのようなときに発生しますか?
次に、損害賠償請求ができる権利は、どのようなときに発生するのか、その具体的なケースをご紹介します。 損害賠償請求ができる権利のことを、「損害賠償請求権」と言います。 いろいろなときに発生しますが、たとえば以下のようなケースがあります。
不倫されたとき
配偶者に不倫をされたら、不法行為にもとづいて、不倫相手に対して損害賠償請求ができます。この場合の損害賠償請求は、慰謝料請求となります。 不倫相手だけではなく、配偶者に対しても損害賠償請求が可能です。
婚約破棄されたとき
婚約を不当に破棄されたときにも不法行為となるので、相手に対して損害賠償請求ができます。この場合の損害賠償請求も、慰謝料請求となります。
痴漢されたとき
痴漢被害に遭ったら不法行為が成立するので、加害者に対して損害賠償請求ができます。この場合の請求内容も、基本的には慰謝料請求となります。
殴られた(暴行を受けた)とき
相手から殴られたり暴行を受けたりしてケガをしたら、相手に不法行為が成立するので、損害賠償請求ができます。この場合、請求できるのは、治療費や休業損害、慰謝料などです。
窃盗被害、横領被害、詐欺被害などに遭ったとき
窃盗や横領、詐欺などの財産犯罪の被害に遭ったときにも、不法行為が成立するので、相手に対して損害賠償請求ができます。この場合に請求できるのは、物の時価や慰謝料などです。
仕事中の事故
たとえば、業務中に操作していた機械が壊れてケガをしたとき、会社による管理体制に問題があったと認められるようなケースでは、会社に対して損害賠償請求をすることができます。この場合、会社とは契約関係があるので、債務不履行責任と不法行為責任の両方が発生する可能性があります。同僚の行為によってケガをしたら、同僚に対して損害賠償請求をすることも可能です。同僚とは契約関係がないので、不法行為責任のみが発生します。
いじめに遭ったとき
学校でいじめに遭ったときにも、いじめは不法行為なので、相手の子どもに損害賠償請求をすることができます。この場合、請求できるのは慰謝料が主となります。
スポーツやレジャーで起こった事故
スポーツやレジャーの最中に第三者の行為によって損害を受けた場合には、その加害者に対して損害賠償請求をすることができます。これも、不法行為にもとづくものです。
以上のように、損害賠償請求ができる場合は、非常に多彩です。
損害賠償として請求できるものは何があるでしょうか?
損害賠償として請求できるものを理解しようとするとき、不法行為にもとづく損害の分類方法を知っておくとわかりやすいです。不法行為によって発生する損害の種類は、いくつかあります。 大きく分けると積極損害、消極損害、精神的損害の3種類に分けられます。
積極損害
積極損害とは、相手の不法行為によって積極的に支出が必要になった損害です。たとえば以下のようなものがあります。
- ケガをしたときの治療費
- 通院のための交通費
- 壊れた物の修理費用
- 壊れた物の買い換え費用
- 介護が必要になった場合の介護費用
- 義手義足などの装具など
消極損害
消極損害とは、相手の不法行為によって、得られなくなってしまった利益のことです。本来なら得られるはずだったのに、相手の行為によって得られなくなってしまったので、その分が損害として評価されます。積極的に支出が必要になるのではなく、消極的に得られなくなってしまった損害なので、消極損害と言います。 たとえば、休業損害や逸失利益などがあります。
休業損害
休業損害とは、不法行為によって働けなくなった期間の収入のことです。たとえば相手にケガをさせられて入院していた期間は働けないので、休業損害が発生します。
逸失利益
逸失利益とは、不法行為によって得られなくなってしまった将来の収入のことです。たとえば、相手に死亡させられた場合には、死亡後に収入が得られなくなるので、本来得られたはずの収入を相手に支払わせる(損害賠償請求する)ことができます。
精神的損害
精神的損害とは、慰謝料のことです。積極損害や消極損害とは違い、具体的に計算できるものではありません。
慰謝料
不法行為があると、被害者は大きな精神的苦痛を受けることになるため、それを加害者に支払わせることができるのです。それが、精神的損害にもとづく損害賠償請求(慰謝料請求)です。
損害賠償請求に時効はあるのでしょうか?
損害賠償請求には、時効があります。民法上、不法行為にもとづく損害賠償請求権は、「加害者及び損害を知ってから3年」で消滅すると規定されています(民法724条)。 そこで、損害が発生したことと、加害者を知ってから3年が経過したら、損害賠償請求ができなくなってしまいます。
債務不履行の場合
債務不履行にもとづく損害賠償請求権の時効は「債務の履行を請求できるときから10年」です。ただし、商人間の取引である商事債務の場合には、5年となります。 ただし、どちらのケースでも、時効の期間の計算をするときには、初日は含まないことになっています。このことを、「初日不算入の原則」と言います。 たとえば、加害者から殴られてケガをした場合には、殴られた日の次の日から数えて3年が経過すると、時効が成立して、損害賠償請求ができなくなってしまいます。
不法行為の場合
不法行為の場合、損害賠償請求権の時効が成立するためには、「損害発生」と「加害者」を知っている必要があります。 そこで、相手が誰かがわからない間や損害の発生を知らない間は、時効期間が進行しません。 たとえば、物を壊される被害に遭ったとき、誰が犯人かわからない間、時効は進行しないということです。 また、不法行為にもとづく損害賠償請求の期限には、「除斥期間」という制限もあります。除斥期間とは、損害が発生してから20年が経過すると、当然に権利の行使ができなくなってしまうという制限です。これについては、被害者が損害や加害者を知っているかどうかには関係なく、期間の経過によって当然に権利が消滅します。 たとえば、自分が知らない間に誰かに物を盗られて、そのことにずっと気づかなかった場合でも、20年が経つと、当然に損害賠償請求ができなくなってしまうのです。
以上のように、損害賠償請求権には、時効や除斥期間があるので、できるだけ早めに請求することが大切です。 自分一人では上手に示談等の損害賠償請求手続をすすめることができない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
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