仕事中に怪我をして後遺症が残りましたが、 会社の過失を訴え損害賠償を請求できますか?
会社は、従業員が安全に働くことができるよう配慮しなければなりません。これを安全配慮義務といいます。 もともとは法律上の規定はなく、最高裁判所の判例により確立された法理でしたが、平成20年に施行された労働契約法が「使用者は、労働契約に従い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」(第5条)と定めることで、明文化されました。 どのような配慮をしなければならないかは、職種、労務の具体的内容、労務提供場所等によって異なるため、一律に決められるものではなく、個別の事案ごとの判断が必要になります。 会社に安全配慮義務違反が認められる場合、会社に対して損害賠償を請求することができます。
目次
仕事中の怪我により後遺症が残った場合、損害賠償額は高額になりますか。
後遺障害がある場合には、慰謝料と逸失利益を請求することができます。
慰謝料は、後遺障害を負った精神的苦痛に対するもので、傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは別に、後遺障害の等級に応じた額を請求することができます。
逸失利益は、後遺障害がなければ将来得られたはずの利益を失ったことを損害ととらえたもので、怪我を負う前の収入を基礎に、後遺障害の等級ごとに定められた労働能力喪失率をかけるなどの計算により算定されます。
後遺障害の程度によっては数百万円~数千万円になることもありますので、後遺障害がある場合には、損害賠償額は高額になるといっていいでしょう。
損害賠償請求と労災の違いについて
通勤中や仕事中に負傷した場合、会社に対して請求する以外に、労災保険の給付を受けることができます。 労災保険は、労働者の保護のため、労働者を雇用するすべての事業者が加入しなければならないもので、これによって事業者にそれほど資力がない場合でも一定の補償を受けることができるのです。
労災と会社に対する損害賠償については、次のような違いがあります。
給付内容が限られている
労災で補償される損害の範囲は法律で定められたもの(療養補償給付、休業補償給付など)に限られており、たとえば慰謝料は給付されません。 これに対し、損害賠償の場合、そのような制限はなく、相当因果関係のある損害はすべてその対象となります。
使用者の過失の有無を問わない
使用者に損害賠償請求をするには、使用者に安全配慮義務違反が認められることが必要ですが、労災の場合、使用者の過失の有無は問われません。
労働者の過失は考慮しない
損害賠償請求の場合、労働者に過失があれば過失相殺の問題が生じますが、労災の場合は労働者の過失は考慮されません(故意、重大な過失は別です)。
請求期間の違い
労災の場合、障害、遺族補償給付は5年、その他の給付は2年以内に申請する必要があります。 他方、損害賠償の場合、契約上の義務違反となり、時効期間は10年です。
入院等で働けなかった期間がある場合、その間の入院費、通院費は慰謝料として請求できますか。
入院費や通院交通費を請求することは可能です。 ただし、慰謝料は精神的苦痛を損害と評価し、それに対する賠償をするものですから、入院費や通院交通費を「慰謝料として請求」するわけではありません。
入院等で働けなかった期間の補償については、労災の申請と会社に対する損害賠償の2つが考えられます。 労災の場合、先ほど説明したとおり使用者の過失や労働者の過失にかかわらず支給されるというメリットがありますが、休業補償給付、休業特別支給金をあわせて従前の収入の80%しか補償されないというデメリットがあります。
他方、会社に対する損害賠償の場合、そのような制限はないため、会社に過失があり、使用者に過失がない場合には、100%の補償を請求することができます。 なお、労災と損害賠償は、二者択一の関係ではなく、労災で補償を受けたうえで、不足額を会社に損害賠償請求するということが可能です。
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