損害賠償請求 FAQ
損害賠償請求 FAQ
民法は、未成年者が他人に損害を加えた場合でも、責任能力(自分の行為の責任を認識するに足りる能力)がない場合には、損害賠償義務を負わないと定めています(712条)。
過去の裁判例をみると、おおむね12~13歳程度であれば責任能力を認めている場合が多いようです。
したがって、相手の子供が12~13未満で責任能力がない場合、加害者本人に損害賠償を請求することはできないのです。
といっても、常に泣き寝入りしなければならないということではありません。
民法は、責任能力がない者(責任無能力者といいます)を監督する義務を負うもの(親権者など)は、監督義務者が監督を怠らなかったとき、監督の義務を怠らなかったとしても損害が生ずべきであった場合を除き、責任無能力者が他人に加えた損害を賠償する義務を負うと定めています(714条)。
監督義務を怠らなかったこと、または義務を怠らなくても損害が生じたことは監督義務者の方で証明すべきとされており、現実には監督義務者が責任を免れることはあまりありません。
したがって、相手の子供が責任無能力者である場合には、監督義務者に対して損害賠償請求をすることになります。
なお、相手の子供に責任能力がある場合、原則通り加害者である相手の子供が損害賠償責任を負います。
この場合に、相手の子供に加えてその親に対して損害賠償請求をするには、その親が一般の不法行為責任(709条)の要件を満たす必要があります。
目次
特別な決まりはありませんが、まず話し合い(示談交渉)を行うのが一般的でしょう。
未成年者は法定代理人の同意がなければ法律行為ができないので、不法行為の責任を負うか否かにかかわらず、被害者の親と加害者の親との間で交渉をすることになります。
損害賠償についての合意ができれば、示談が成立しますが、後日の紛争を避けるために、示談書を作成しておく必要があります。
交渉をしても合意に至らない場合には、調停や訴訟といった裁判所の法的手続を利用することを検討しなければなりません。
この場合も、未成年者は訴訟能力がないので、双方の親が子供に代わって訴訟などを行うことになります。
請求方法自体は基本的に変わりありません。
請求額によって少額訴訟という手続が使えなくなったり、裁判所の管轄が簡易裁判所ではなく地方裁判所になるという程度でしょう。
ただし、大怪我の場合、それだけ請求する金額も大きくなると考えられます。
本来、慰謝料などを請求することができるにもかかわらず、知識がないためにそのことに気付かず示談をしてしまい、大きな不利益を受けるおそれがあります。
また、請求額が大きくなると相手方の支払能力の問題が生じるため、相手方が支払額を抑えようとすることがあります。
たとえば、子供の喧嘩の場合、加害者が100%悪いとは言い切れず、被害者にも何らかの落ち度がある場合も多く、法律上は過失相殺の問題があります。
怪我が軽微な場合であれば、加害者の親が「けがをさせたのは間違いないから治療費は払います」といってことさらに過失相殺を問題にしないことも珍しくありませんが、請求額が大きくなるとそうも言っていられず、過失相殺を主張されることもあるでしょう。
このように、大怪我で請求額が大きくなるとすると、より問題が複雑になります。
ですから、大怪我の場合には、専門家である弁護士に相談するのが望ましいといえるでしょう。
怪我を負ったことで必要になった治療費や通院交通費などを請求することは可能です。
ただし、慰謝料として請求という表現は誤りです。
慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償のことで、治療費などとは別に考えられるべきものです。
「損害賠償」という場合の「損害」は、次のように整理することができます。
したがって、治療費は治療費として、慰謝料は慰謝料として、個別の金額を算定し、その合算を請求するのが損害賠償請求であると理解してください。